スーパーセールスの軌跡
《第6話》怪しいご夫婦part2
そう! 何を隠そう、この怪しさがにじみ出ているご夫婦こそ、私の初契約者様であります。
そして今後の私の未来を変えた“幸運の女神”そのものです。
人は必ず“運”という言葉を使うと思います。
運試し、運気、運勢、幸運など、誰もがその言葉に期待をし、常にそれを得ようとすると思います。
誰もが「努力無しに運が来ないか」を期待してしまうものです。
営業の世界ではみなさんそう思っていませんでしょうか?
そして、そのようなことに出くわしていることがたくさんあると思います。
例えば、
<良かった例>
- 休みの日に出勤し、仕事をしていると来店する熱いお客様。
- 展示場の外で、掃除をしていると声を掛けられてくる熱いお客様
- 炎天下の中、水撒きをしていると来店する熱いお客様。
<悪かった例>
- 自分の接客順の次のほうが熱いお客様
- トイレに行っている間にやってくる熱いお客様
- イベントでの来場だと勘違いして契約を逃す。
このようなことを、少なからず経験した人は多いはずです。
良かったときは
「運が良かったよ!」
悪かったときは
「何で俺の時には、変な客ばかりなんだ!運が悪い!」
「本当は俺の順番なのに…。運が悪い!」
「上司から電話が来なければ・・・。俺の客なのに…。ずるい!運が悪い!」
どの営業の方も、ここ最近も口に出している言葉のはずです。
私は、この人生で最悪な3ヶ月を送った中で、上記のようなことが起こるのは、起こるというより“巻き起こる”ことは偶然の運ではなく、必然的に幸運が巡ってくるのではないかという気持ちになったのです。
自分が…自分が…と自分本位にしているときは、何も良いことが無かったのに、店長からのアドバイスを素直に受け止め、感謝の気持ちでいることが出来るようになってからは、明らかに自分の周りに起こる出来事とのギャップを、偶然とは思えなくなってしまいました。
「これは間違いない!自分が少しだけでも変われることが出来たことに対するご褒美を神様がプレゼントしてくれたに違いない!」
神様が連れてきた幸運は、正に幸運の女神です。
私は、正直その後どのようにこの「怪しいご夫婦」と付き合っていったか良く覚えていません。ただ、自分の中では、このお客様に対して、良いところを見せようとか、汚名返上をしようなんて気持ちは無く、ただただ、私の前に現れてくれたことに感謝し、毎日のように設計者と自宅に伺って、メモを取って、奥様が作った冷たい麦茶を飲んでいた・・・、それだけだったと思います。その時の気持ちは「ただお客様と一緒にいさせて欲しい」という一心だけでした。そしてこの幸運に感謝をし続けているだけでした。
このお客様は、本当は凄い人です。Tシャツ・短パンで来たのに、実はジャガーに乗って、NSXも所有していて…。
私のような33歳の新人相手に怒ることも無く。
そのかわり、私の動きをしっかりと見ていてくれる。
そしていつも言う言葉は、
「最初はみんな大変なんだよ」
「これで契約になったら俺たちが契約一番だね!」
「なんだか、うれしいね!」
そんな素敵な言葉を言ってくれるご夫婦です。
ただただ凄いです。
感謝です。
この幸運の女神に…。
細かい打合せでは、店長も同席いただき、いよいよ契約をお願いするときになりました。
結局、私は何もしないうちに全部店長と設計者が段取りをしてくれました。
お客様から、私に対して
「契約の時には、いくら用意すれば良いの?」
正直、なんて答えれば…。
店長の指が3本! 私のひざに突き刺さってくる!
「300万円で良いですか?」
奥様が、たぶんやり取りを一部始終見ていたのでしょう!
笑いながら、「300万円ね!」「大丈夫よ」
さすが幸運の女神!