スーパーセールスの軌跡
《第13話》 気付きはどこにでも落ちている
さて、前章にて“気づき”とはどのようなことかを、私なりの解釈で説明させていただきました。
それでは、今日から“気づき”があるわけではないと思います。
以前の“聞き耳”の話のときには人は「聞こうとしないと聞こえない。」といいました。
“気づき”も全く一緒です。
でも、私は“気づき”について真剣に考えるようになってから、凄いことに行き着くことが出来ました。
それは、“気づき”はどこにでも落ちている事です。
“気づき”が落ちていることに気づかず、ただ拾わないだけなのです。
…。
また訳のわからない話だと思っている人が居るとはおもいますが! これが事実です。
それでは、これから私が日々の仕事の中でどのように“気づき”を見つけてきたかを書きたいと思います。
そこから、皆さんも日々の生活に置き換えていただき発見していただければと思います。
掃除は“気づき”の原点
この会社に入社した頃のエピソードは、ずいぶんお話したと思いますが、掃除に関してこのようなことがありました。
それは私が、展示場で作業をしているときのことです。
上司の所長が店内に入って私を見つけたとたんに、
「お前! 掃除は大切な仕事だと言ったくせに、全然やらないじゃないか! お前は嘘つきか!」
と、一喝されてしまいました!
はぁ? と言う気持ちでしたが、思わず「なにがですか?」
と答えてしまいました。
以前私は、住宅営業の前は、チェーンストアで働いていたことは以前に説明させていただきました。その頃から、現場での教えは「整理・整頓・清掃・挨拶」が原点でした。
お客様のために行う業務として、欠かせないことだと教わり、自分なりに実行してきたと思っていました。
ただ、掃除の意味を間違っていたことは気づくことも無く、掃除をすることは来場いただいたお客様に喜んでいただく為にするものだと思っていました。
それも確かに重要ではありますが、もっと大事なことが隠れていることに気づいていませんでした。
この会社に入社したときも上司に対して、前職で清掃業務はがんばってきたことを伝えていたことで、それに対してのお叱りだったと思います。
一言言い返した私に対して、
「ちょっと外へ来い!」
と、首元をつかまれ展示場横の通りへ…。
こんな歳になって、こんな対応は…。
所長より
「おまえ、前職で掃除は大事で、職場の外周も掃除していたと言っていたよな!」
「この会社でも、つづけて行くと言ったのに、やっていないじゃないか!」
注意されている場所は、駅へとつづく公共の通りでした!
確かに、外周掃除はしていたけれど…。通りまではやっていなかった…。
と、言うよりは公共の場所まで清掃する義務はないのに! という気持ちでした!
それに心の中では
「俺は住宅営業なのだから、仕事もしないで公共の道路清掃なんかしない!」
それでも、厳しさの恐怖と嘘つきと呼ばれた悔しさから、その日以降毎日、公共の通りの掃除をするようになったのです。
その頃は、ご存知の通りお客様も居ない状況で、どちらかといえば掃除をする時間がたくさん有りました!
毎日、ゴミ袋を持ち、素手でタバコの吸い殻や空き缶を拾い、雑草を抜く日が何日か続いていました。
ある日、いつも通り清掃をしていると、通りすがりのご婦人から、
「いつもご苦労様!」
と笑顔で声をかけられてしまいました!?
それからも、通りすがりの散歩中の方からも、
「お疲れ様!暑いのに大変だね!」
何か不思議な気持ちがしてきたことを、今でも覚えています。
営業をしている中では、自分から声を掛けて、挨拶をしても、答えていただけないのが営業だと思っていました。それが、なぜか今は、見知らぬ相手から、気軽に声を掛けていただいていることに不思議な気持ちでいっぱいでした。
それ以外にも建築現場の仮設トイレも、所長から「掃除ぐらいして来い!」と言われ、Yシャツをめくって掃除をしていると、普段は厳しい職人さんも、コーヒーをご馳走していただいたり、気軽に声を掛けていただけるようになることが出来るようになっていました。
ある時、所長から「掃除をやっていて何か良かったことはあったか」
と尋ねられ、私も今までの出来事を報告しました。
所長から
「良かったじゃん! たくさん話しかけてもらって!それでどう思った?」
私は思わず、
「うれしかったです!」
と答えました!
所長は、笑顔で
「そうだよ! うれしいだろ! その笑顔だよ!」
「人は、口で何を言ってもダメなんだよ!」
「人は、手を汚し、汗をかいて、努力している姿に感動するんだよ!」
「今までの、お前は、やりました! やっています! と口ばかりで、何も感動が無かった!」
「今のお前の笑顔には感動があるよ!」
「お前が手を汚して頑張ったことで、地域の方からたくさんの信頼を得ることができたよ! おめでとう!」
なんだか、また所長に美味くだまされて気もしましたが…。確かに、その通りだと思いました!
人から声を掛けていただくことに感動を覚えていました!
今までは、挨拶をすること、こちらから声を掛けることが仕事だと思っていたからです。
でも、挨拶をしても返事が返ってこない、声を掛けても無視される。それが、当たり前だと思っていたのに…。ただ、掃除をしていただけなのに、このワクワク感は何だろう!!
これは正に前章で書いたこの言葉です。
「自分の知らないことすら知らない」未知の世界を知った瞬間でした!
たかが掃除の中に、たくさんの“気づき”が落ちていることを初めて知った瞬間でした!
今までは、掃除をしているフリをしていたことで、たくさんの“気づき”が落ちていることに気づかなかったのです。
ただの掃除でも真剣に向き合うことで、たくさんの気づきと出会うことができると言うことを知ることが出来た瞬間です。
ただ、今まではそれに気づかず、たくさんの“気づき”を拾い忘れていたのだと気づきました。
掃除と言うのは、全ての原点であり、そこに多くの“気づき”があるように、全ての物事には全て意味があり、“気づき”があると思えるようになりました。
私の気づきのきっかけは、掃除でしたが、皆さんにもこのような経験が少なからず合ったと思います。
掃除をしていたら、なぜかお客様が来店した…など。
ちょっとした業務にも、物事には全て意味があると思いながら仕事を進めてみてはいかがでしょうか?
きっとそこには、新しい“気づき”があるに違いありません!