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宅建勉強3月14日(月)
2022.03.14
問6
AはBにA所有の甲建物を令和4年7月1日に賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。
- Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。
- AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
- BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。
解説
- “Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。”[誤り]。AB間の原賃貸借契約が合意解除された場合には、その終了を転借人Cに対抗できませんが、債務不履行解除の場合には、その終了を転借人Cに対抗できるというのが原則です。では、合意解除した当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときはどうなるのかというと、債務不履行解除と同様の扱いになります。よって、賃貸人Aは転借人Cに明渡しを請求することができます(民法613条3項)。
- “Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。”正しい。賃借人は、契約等によって定められた用法に従って、賃借物を使用収益しなければなりません(民法594条)。用法違反とは、この義務に違反した行為のことです。賃借人の用法違反により賃貸物に損害が生じた場合において、貸主が損害賠償請求をするときは、賃貸物の返還を受けた時から1年以内にしなければなりません(民法600条1項民法622条)。
- “AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。”正しい。賃借人が賃借権の対抗要件を備えている不動産が譲渡された場合、賃貸人としての地位(権利義務)はその不動産の譲受人(新所有者)に移転します。ただし、不動産の譲渡人と譲受人の間で、賃貸人の地位を留保する旨の合意があるときを除きます(民法605条の2第1項・2項)。
本肢は、建物の引渡しが済んでいるので、賃借人Bは建物賃借権の対抗要件を具備しています。よって、甲建物がAからDに譲渡された場合、賃貸人としての地位は新所有者であるDに移転するのが原則です。
なお、賃借人が賃借権の対抗要件を備えていない場合には、新所有者に賃借権を対抗できないので建物の明渡しを求められることがあります。 - “BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。”正しい。転貸が適法に行われている場合、転借人は、原賃貸借契約と転貸借契約のいずれか低い賃料を限度に原賃貸人に対して直接負担を負います。この際、転借人は、賃料の前払いをもって原賃貸人に対抗することはできません(民法613条1項)。
よって、転借人Cは、転貸人Bへ賃料の前払いをしていても、それをもって原賃貸人Aからの賃料支払い請求を拒むことはできません。
したがって誤っている記述は[1]です。