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宅建勉強1月27日(木)
2022.01.28
問1
次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。
(判決文)
私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によつたのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。
- 権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であれば、事情のいかんにかかわらず許される。
- 建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であり、賃貸人は賃借人の同意の有無にかかわらず、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる。
- 建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利を著しく侵害するため、原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる。
- 裁判を行っていては権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に私力の行使が許される。
解説
- “権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であれば、事情のいかんにかかわらず許される。”誤り。自力救済(法的手続を経ずに、私力の行使により権利回復を果たすこと)は原則として禁止されています。判決文では「緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で」許されると説明しているので、「事情のいかんにかかわらず許される」とする本肢は誤りです。
- “建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であり、賃貸人は賃借人の同意の有無にかかわらず、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる。”誤り。賃貸借契約終了後の建物に残された残置物の所有権は、元賃借人にあります。契約が有効に解除されていても、法的手順を踏まずに残置物を処分することは所有権侵害行為に当たるため、残置物を無断で撤去することは許されません。
- “建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利を著しく侵害するため、原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる。”誤り。鍵の交換や破壊等により賃借人を建物に入れないようにする措置は自力救済に該当し、特段の事情がない限り、数々の判例で不法行為が成立することが認められています。よって、本肢の行為は許されません。
- “裁判を行っていては権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に私力の行使が許される。”[正しい]。判決文そのままです。私力の行使による権利回復、すなわち自力救済は原則禁止ですが、やむを得ない特別の事情がある場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に認められる可能性があります。
したがって正しい記述は[4]です。