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宅建勉強1月11日(火)
2022.01.11
問4
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。
- 被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。
- 第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
- 名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。
解説
- “放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。”誤り。不法行為または債務不履行により損害を被った被害者が、同じ事由により利益を得た場合には、利益相当額を損害額から控除する場合があります。これを「損益相殺」といい、条文上は明記されていませんが学説・判例上異論なく認められています。ただし、受け取った火災保険金については、この控除される利益に当たらないという判例が示されています(最判昭50.1.31)。
よって、当該家屋所有者は損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除する必要はありません。 - “被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。”誤り。肢1の解説通り、被害者が、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合、損益相殺の概念により、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除することがあります。
- “第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。”誤り。不法行為を教唆した者も、不法行為責任を負うこととなります(民法719条2項)。よって、債務者を教唆した第三者も、行為者と連帯して債権者に対する不法行為責任を負います。
- “名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。”[正しい]。名誉を侵害された者は、損害賠償のほか、名誉権に基づき侵害行為の差止め請求も可能です(民法723条最判昭61.6.11)。判例では、名誉侵害に当たる出版物の事前差止めを認めています。
したがって正しい記述は[4]です。