スーパーセールスの軌跡
《第4話》ダイコンの話
前回にお話ししたとおり、K店長はとても落ち着いた感じ。背は私よりかなり小さい(きっと気にしているので深くは言ったことは無い、私は180センチ)が、いつも清潔感があってダンディ!
そんな店長が、誰からも相手にされなくなった私に声を掛けてきてくれたのです。「社会の先輩に対して失礼な事を言ったらごめんなさい。」と一言前置き。なんて謙虚な人だろう!
《店長》「あなたの得意なことって何です?」
(・・・??)
何を言おうとしているのかが分からず…。
《店長》「僕は社会に出てからこの仕事だけなので良くわからないけど、たまに学生の時に、やっていた野球の話で盛り上がったり、車の話で接客が終わったり…。どちらかと言えば、余り僕は家の話が得意ではないんですよ!」
(・・・!!???)
よく言う! 年間10棟も売っているのに…。
《店長》「あなたは家の話を良く知っているよね! 勉強していますよね?」
《私》「まあ、そうですね!!」(また過信・・・)
《店長》「もう家の話をするの止めませんか?」
(唐突!!!)
《店長》「あなたは、この会社に入ってから、あまり前職の話をしませんよね! N所長が言っていた負け組みではないのでしょ?」
私も思わず「はい、前の仕事は好きでした!」
《店長》「そうだよね。負け組みって言われて悔しかったでしょ?」
・・・ハッと思いました! 確かに、大好きな仕事に対して腹が立ったと思います。私は「はい、悔しいです!」と答えてしまいました。
《店長》「そう! だったらその好きな話をすればいいじゃないですか! 私たちが絶対知らない話。そうだ! 食の話は? 主婦に受けそうだよね! とりあえずダイコンから言ってみましょう!」
(・・・ウケル? ダイコン?)
確かに職業病のように、買い物袋の中身を見れば、献立がわかる! 野菜の保存方法とか、美味しい食べ方も知っている。衣料品のことも家電製品の事も、かなり詳しい! いつの間にか、14年間でチェーンストアの仕事を大好きになっていた! 今になって何で辞めたのだろう…、と思うくらいに。
それを年下の店長に見抜かれていた! 悔しい気持ちと、見ていてくれたことに感謝とホッとした気持ちになっていた。今の私は、誰からも受け入れられていない存在。せっかくのアドバイスを受け入れてみようと初めて思いました。人の話を聞き入れる事は、なんて凄いのだろう!
それから、私の中で小さな気付きが生まれてくるようになりました。また、そのように聞き入れる事が出来たときに限って、買い物袋を持った人が来場する!(それはまるで誰かが見ているかのように…。)
《お客様》「通りかかったら展示場があったから見るだけでも良いですか?」
《私》「どうぞ! それより今日のおかずは…。」
なんと、初めて2時間もお話させて頂きました! ほとんど家の話はしないで!
結局、今のキッチンの使い勝手の悪さや日当たりを気にしていることを教えていただき、次週に敷地の調査をさせていただく約束を取る事ができてしまいました。それをきっかけに、私の今までの人生の中には無かった、「人の話をもっと聞きたい! アドバイスが欲しい!!」という気持ちが大きく湧いてくるようになりました!