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【税金】行き過ぎた節税にくぎ刺される
こんにちは。住宅比較の森田です。経営者にとって、税金をなるべく少額にしたいというのは共通で抱いていることだと思います。そんな節税対策として、生命保険会社は2010年代後半から中小企業の経営者を対象として節税保険なる商品を販売してきました。今回は2022年2月10日の日経新聞より、この節税保険を取り締まる金融庁と国税庁の異例のタッグについてご紹介します。
節税保険とは、払った保険料を会社の経費として損失算入し、課税額を抑えられるというもの。2010年代後半に日本生命や第一生命傘下のネオファースト生命などが、中小企業経営者の需要をとらえて商品販売が拡大されていきました。2018年ごろの市場規模は、なんと推定8000億円以上。生命保険の新規契約全体の3割程度を占めるまでになりました。金融庁は生命保険の認可審査にあたり、国税庁と連携します。脱税、行き過ぎた節税に対し国税庁が鋭く目を光らせ、金融庁の商品監査部門に助言するのです。
そもそも節税に使われる保険は金融庁が認可しており違法ではありませんでした。しかし、節税効果を分析しきれず、節税保険が蔓延する結果を招いてしまいました。国税庁が入り口段階から絡むことで、商品認可のハードルが上がる可能性が高くなるでしょう。募集の現場にも介入し、保険代理店の調査にも協力します。オーバーな勧誘は規制されるということです。
2庁の異例のタッグの背景には節税の悪質性が年々高まっていることがあります。国税庁は2019年6月に保険料の損失算入方法を大幅に見直す通達を出し、儲け頭であった中小企業経営者向け保険にメスを入れました。しかし新しい規則には新しい抜け穴があるもので、今度は「名義変更プラン」と呼ばれる商品が外資など一部の生命保険から登場しました。
名義変更プランとは、定期保険の一種で解約時の返金率が低いうちに契約者の名義を個人から法人に変え、返金率が高くなった時期に解約して返戻金を受け取る仕組みです。解約返戻金は「一時所得」として扱われるため、通常の所得より税負担が軽いのです。国税庁は2021年6月に実質認めないお達しを出しました。
介護保険にも問題が。一部の外資系生命保険が、介護保険を通じて高所得者が子供など親族に非課税でお金を移せる手法として打ち出したのです。国税庁は2021年3月、介護保険で保険金の非課税制度を悪用した節税手法を取らないよう生命保険業界に注意喚起をしました。
金融庁も2021年の生命保険協会との意見交換会で、節税保険も含め「適正な保険募集の徹底をお願いしたい」とくぎを刺しました。同庁幹部は「節税の有無にかかわらず、顧客のための商品でなければ保険として意味をなさない」と話します。
これまで金融庁と国税庁は事務的なやり取り以外は別に行動していました。金融庁は顧客の保護、国税庁は税金の適正な徴収と、行政における目的が違うためです。行き過ぎた節税行為を抑止するには、省庁を超えて連携したほうが効率的との判断に至りました。
業界からは不満もこぼれています。問題が長年収束しなかったのは、商品にお墨付きを与える当局にも責任の一端はある、との声も。他には、企業経営者の需要があるから商品をそろえたのに、だめなら一律禁止にしてほしい、との意見もあります。
生命保険協会によれば、2020年度の個人保険(経営者保険含む)の保有契約高は815兆円と、5年前より5%減りました。人口減少や若者の保険離れが進む中、業界全体として売りやすい保険に飛びついてしまった感は否めません。今回の商品審査見直しをきっかけに、経営者向け保険の在り方について業界全体として真剣に考える必要があります。